第37話

「もういいッス。続きは俺がやっておくんで」


「えー?いいんですかぁ〜?」


「はい。向こうで掃き掃除でもして来てください」




とにかく、これ以上負担を増やされたくないし、野菊ちゃんのところへ行って、片付けを含む作業を代わる。



そしたら、いったい何を勘違いしたのか「わーい!ありがとうございま〜すっ」とテンション高くお礼を言いながら、俺の腕にまとわりついてきた。



内心ギョッとしつつも、愛想だけ軽く振って、やんわりと振り払う。




別に悪気はないんだろうがな……。


あれだけ祖母さんから疑いを掛けられていただけに、すっげぇ複雑。



要らぬ誤解は招きたくねぇし。


勘弁して欲しい。



そもそも『わーい』って何だよ。



俺はお前を喜ばすためにやってんじゃねぇぞ。


むしろ逆。


怒ってんだからな。



しっかり反省してくれ。




つか、そんなことをしている暇があったら早く商品名の一つでも覚えろ。



毎度、毎度、客の前で同じ商品について尋ねてきやがって。




ホント、お前は仕事をナメてんのか!とキレそうになってんだから、俺も大概仕事バカだし、気性が荒い。



堅物のジイちゃんの血を色濃く受け継いでいる。

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