秋の月

第33話

【皐月side】



花見客で外の通りが賑わう朝。


皆で慌ただしく開店の準備をしている最中。




「あっ、やっばー!」




何かが崩れ落ちる音と共に、不吉な叫び声が店に響いた。



何事かと暖簾を捲くって店を覗けば、漫画のドジっ子キャラのように “てへぺろコツン” とやっている従業員(20)の姿が。



床にへたり込んだ彼女の周りには、粉々に割れた可哀想な煎餅せんべいたちがチラホラ。




「……」




突拍子もなく起きたトラブルに何も言葉が出ず、ただ呆然。



横から顔を覗かせたジイちゃんが『おいおい、またかよ』と、冷ややかな眼差しで呟く。




「もー。私ったら、またやっちゃったぁ〜」




能天気にドジっ子アピールをするこの女は、新しく雇ったバイトの野菊のぎくちゃん。




彼女がうちの店にやって来ること数日。



凄まじい勢いでお店のモノが破壊されていく。



確かに天真爛漫な野菊ちゃんのおかげで店の雰囲気は明るくなった。



が、何分、払う代償が大きすぎる。

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