第6話

結婚の話が出たときもそうだ。



私のお祖父ちゃんがお酒の席で言った『うちの孫を貰ってくれ』って冗談に、皐月は一部の迷いもなく『はい』と答えた。



その気なんて全くなかったお祖父ちゃんの気持ちをコロッと変えてしまうくらい。



あの日の皐月は大バカ真面目な顔で頷いた。




『俺はお前とならそうなってもいいと思ってる』と。



近くでびっくらこいていた私にそう言った。





そりゃ、皐月だって“くは店を持ちたい”とか、そういう野望みたいなモノは持っていたと思う。



職人として働くからには、夢や目標みたいなモノだってあるだろうし。




だけど、さすがに嫌いな女と結婚してまで店を継ぎたいとは思わないはず。



そこはもう、負けるのが嫌いな皐月のことだ。



コネなんか使うくらいなら、堂々と自分の腕で私から奪い取るくらいのことはする。




だから、その選択を選ぶからには私への好意みたいなモノがそれなりにあるのかな……と、そのときの私は思った。



結婚するなら私がいいとか、そんな。

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