第89話

「んー…、ごめん。今日は何も決められそうにないや」


「なんで?」


「いっぱいあるし、迷っちゃって…」




様子をうかがうように顔を覗き込まれて緩く笑う。



泣いたら怪しまれるのは分かっているけど、何かもう無理。


気を抜いたら泣きそうだ。



言葉や顔は誤魔化せたけど、声までは誤魔化せない。


嫌になるくらい震えてしまう。




今更、遅い。


遅いけど。罪悪感が胸に押し寄せて止まらない。


今まで感じなかった分まで一気に押し寄せてきた。


裏切った、って気持ちが。


懺悔でいっぱい。




聖也君もあたしに黙っていた間、こんな気持ちだったんだろうか。



いや、普通な顔をしてあたしと話してたし、別に何とも思ってなかったのかな。



バレなきゃいいやって、それで…。


聞かなきゃ永遠とあたしに言わないつもりだったのかも。



一生、隣で嘘を吐き続けて。

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