第88話
「どうした?」
黙り込んでたら聖也君が後ろからあたしを抱き締めた。
温かい腕の中にすっぽり包まれて直ぐ、機嫌を取るように頬を指で擽られる。
あぁ、あたしの好きなやつだ。
落ち込んでいたり元気が無かったりすると聖也君があたしによくしてくるやつ。
笑えよなー、ってそんな感じで。
そこから、ちょっと甘えたりするのがいつもの流れ。
ほんと、お互いやることが一緒。
どうやれば機嫌が良くなるとか、何をされるのが好きとか、付き合いが長いだけにお互いよく知っている。
考えてみれば、そんなのいっぱい。
数え切れない程ある。
10年。
長いや、やっぱり。
簡単には捨てられないモノが沢山。
大事にしてたし、大事にしてくれてた。
大切だったし、大切にしたかった。
なのに、なんでこうなったの。
たった1回の過ちで積み上げてきた物が全て簡単に崩れた。
いや、違うか。
崩したのはあたしだ。
ヒビを入れたのは聖也君でもそれを壊したのはあたし。
やけになって、あたしが何もかも壊した。
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