第87話
一応、外された指輪はいつも通り嵌めている。
その辺、別に何も言わなくたって朝になったら普通に返してくれた。
だけど、東郷は返す時にあたしの手に指輪を乗せながら言ってた。
『もう、その指輪の中身は俺が奪っちゃったから。中には何も入ってないし、嵌めても意味ないよ』って。
まるで指輪はただの指輪になってしまったとでも言いたげに、指輪に込めた思いは全て消えてしまったかのように。
『まぁ、中身を指輪に戻すかは楓さん次第だけどね』と、随分と軽薄な笑みを顔に描いて言ってた。
ほんと何をやってんだか…。
していることは聖也君以上に真っ黒だ。
色んな感情がごちゃ混ぜに渦巻いて困る。
嫉妬、独占欲、反逆心、悲しみ、憎しみ、愛情、その他、沢山。
純白のドレスが、神聖な教会の写真が、楽しそうに笑う聖也君の笑顔が、やけに白くて眩しい。
本当に結婚してもいいのかな…。
こんな女と。
永遠にずっと愛し合うって誓えるのかな。
この人と…。
一生一緒に居たいと言っておいて裏切り合った2人が?
紙切れ1枚を継ぎ足して誓い合えば何か変わる?
幸せになれるの?
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