第75話

「何?なんでそんな怒ってんの…」



我慢出来なくなって思わず機嫌を取りに行った。



肩に寄りかかって、甘えるように頭を擦り付けて、ちょっとやり過ぎなくらいブリッコ。



何かあざとい…と自分でも思うけれど、聖也君はあたしにされるこれが好きだ。



何がそんなに良いのかは分からないけど、やるといつも機嫌が良くなる。



どれだけ怒っていたって、しょうがなさそうに表情を和らげて、あたしの肩に腕を回しながら頭をクシャクシャって。



それがいつもの流れ。



だけど、今日は無視。完全無視。



許してくれないらしい。


あたしの言葉が信じられないのか、何か思うところでもあるのか、パカっと蓋を開けて中を見た。



結構使っていたらしく中身は半分以上減っている。



使われている香料の匂いなのか、リンゴのような香りが漂ってきた。



東郷の髪の匂いと一緒だ。


この場に居るみたいで胸がざわつく。

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