第64話

「嫌じゃないけど…」


「嫌じゃねーの?」


「うん。でも、」



ダメって声は唇で掻き消された。


嵌めていた指輪がスルッと抜けて、溶けるように暗闇の中に消えていく。



触れるだけの優しいキスだ。


思わずしてしまった感じの。


家に来てからずっと我慢していたような。



そのくせ、唇を離すなり、



「じゃあ、もう返さない」



って枕に頭を沈められて溺れそうなくらい甘ったるいキスをされた。



どっちにしたって意味は同じ。


そんな抑え切れないように欲しがるなんて狡い。



頭の中がかき乱される。

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