第63話

「何…?」



思わず聞いてしまった。


なんで見てるの?って気持ちでいっぱいで。


そしたらおもむろに手を掴まれて指輪に触られた。



あの日とは違って、いつも通り薬指にめている聖也君とのペアリング。


離れていたって2人を繋ぐ銀色の指輪。


位置をズラされ、ピクッと肩が震える。




「外していい?」


「なんで…?」


「楓さんが欲しいから」


「欲しいって…」


「嫌?」




静かに、小さな声で聞かれた。


真っ直ぐな瞳であたしを捕まえて。



欲しいって…どういう意味で?


外してどうするの?


嫌?ってそんな聞き方をするのは狡いと思う。



ダメだとは思っても嫌だとは思えないあたしが居る。


嘘も吐けないし、誤魔化せない。

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