第62話

「寝るの…?」


「うん」



抱き枕みたいに抱き締められて力強い腕の中。


逆らえずにじっとしてたら東郷が傍にあったリモコンで電気のスイッチを切った。



訪れたのは沈黙で薄暗くなった部屋に時計の時を刻むカチカチって音だけが響いている。



静かすぎる所為で息もしにくい。


呼吸をするのさえ気を使う。



いっそテレビでもけようかと背中を向けたら、更に強く抱き締められた。


うなじに顔を埋められ、くすぐったいんだか、感じてんだか、一瞬、声が出そうになる。




もうどっちの心臓がバクバクいってんだか分からない。


どうしてこんなに緊張しているんだか自分でも謎。



何もされないし、何も言えない。


眠ることも出来ずにただ時が過ぎる。



カーテンの隙間から覗いた月だけがじわじわ動いていて、明るさがほんの少し変わったかなって頃。


もう寝たかな…と思って振り向いたら東郷と目が合った。


全然眠る素振りもなく真顔であたしの顔を見てる。

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