第52話

「あん時の先生、教頭相手にすげぇ悪い女みたいな顔で笑っててさ。平気で嘘吐きまくるし、普段真面目なだけにギャップが凄かった」


「あれはまぁ…、って悪い女みたいな顔ってどんな顔よ」


「男を騙して悪さしまくってそうな顔」


「えー」


「この先生、裏でもあんのかなって見てだけどやっぱ真面目だし。何かもう気になって止まんなかった」




そう言って東郷は照れたように視線を逸らして古いポスターを剥がした。


ちょっと乱暴。


恥ずかしそうにしちゃって、まるで告白でもされているみたい。


動揺する。




「もう分かったから。早く帰りなさい」


「えー…」


「下校の時刻が過ぎてるでしょ」




どう返せばいいか分からなくって、不満そうな声を出す東郷に真面目な口調で返す。



色んな感情が押し寄せて内心修羅場。


何だか恥ずかしい気分になりながら回収したポスターを丸める。



しっかりしないと…、相手は生徒なんだから…、って気持ちが妙に焦って止まらない。



東郷が普通の態度で接して来るだけに余計。


意識しないように必死。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る