第91話

その後ろ姿を見てたら無性に申し訳なさが込み上げて、ドバッと涙が零れ落ちてきた。



自分でもビックリ。


あまり泣いたりしないし。




でも、私以上に村田の方が困惑してる。



驚いたように視線をコチラに向けて、“ええっ”って感じに目を見開き、動きを静止。



ソワソワと落ち着きなく突っ立っていたかと思ったら、物凄く戸惑った顔で近づいてきた。



様子を窺うような視線を向けられて、呆然と見つめ返す。




「……どっか痛い?」


「ううん」


「吐きそう?苦しいとか?」


「大丈夫……」


「本当に平気?いきなりコテって死んだりしないよね?」


「死なんわ」




どうやら痛みで頭がバグったと思ったらしい。


緊張した顔で恐る恐る体調を確認され、あまりの怯えっぷりに思わず笑ってしまう。



そしたら村田は安心したように表情を緩めて、背中を擦ってくれた。


ほんの少し、ぎこちない手付きで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る