第88話

「え、は?花音⁉」


「血だらけじゃねーか!」


「うん。ごめん。こんな姿で……」


「いやいや、そんなことを気にしてる場合じゃないから!」


「とにかく止血だ、止血」




叫びに近い声を上げられ、落ち着きかけていた心臓が一気に騒ぐ。



村田は余程焦っているのか足をぐねって転けそうになっているし。


マスターは狂ったようにガーゼやおしぼりをカウンターにバラ撒いてる。



普段はのんびりしている2人が恐ろしいくらい大慌てだ。




そんなにヤバイかな。


今の私……。


確かに血はまだ出てるし、気分も悪いけど……と回らない頭で考え、ドアの付近でオドオドする。




取り敢えず渡されたおしぼりで傷を押さえて店の中を見回せば、有り難いことに他のお客さんは居ないようだった。



居たら営業妨害になってたし、タイミングが良かったな、と思う。

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