第87話

本当は警察署に逃げ込むのが正解なんだろうけど、気付いたらココに来てた。



頭で考えたのか。

心で考えたのか。



どっちか分からないけど、無性に“村田と会いたい”と思ってしまった。


どうしようもなく。




「いらっしゃいませー」



お店のドアを開けると、鈴のドアベルがカランと鳴り、お客を出迎える村田の声が飛んできた。



店内はいつも通り暖かな雰囲気で、挽きたてのコーヒーの優しい香りが漂っている。




招かれるように一歩足を進めれば、カウンターで作業をしていたマスターと村田が呑気な笑みを浮かべて顔を上げた。



が、2人とも私の姿を目に捉えた瞬間、すぐさま表情を一変させる。




襲撃してきたゾンビでも見たかのように。

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