第86話

「……おいっ!」




すぐに貴ちゃんが追いかけてきたけど、人だかりに阻まれて立ち止まった。



私が路地を曲がる頃にやっと走り出した感じだったし、きっと追い付かれはしないはず。



そう思いながらも足を止める気にはなれず、とにかく道をジグザグに走って逃げた。



痛みで体は悲鳴を上げてるし、通りかかる人は揃いに揃って驚いた顔をしてくるけど、気にしている余裕はない。


とにかく逃げたい、の一心。




「はぁ……」



そこから頭と足がふらふらしつつも何とか走り抜けること数分。


見覚えのある、猫のイラストが描かれた看板が見えて足を止めた。



辿り着いたのは【キャット】って名前のオシャレなカフェの前。



村田の勤め先だ。


店内のインテリアは、その名前に相応しく猫で溢れている。

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