第84話

「ちょっと、あんた。ヤメなさいよ!」


「そうだ。女の子相手にひでぇだろ!」




さすがに止めなきゃマズイと思ってくれたのか、それまで呆然と見ていた気の強そうなオバちゃんと、厳つめのオジサンが庇うように間に入ってくれた。



周りの人も目が覚めたように、救急車だとか通報だとか騒いでいる。


けど、貴ちゃんは気にしていない。


周りの発言なんて、まるっきり無視だ。



しかし、マズイって感情はかろうじて残っていたらしい。


急かすように私の腕を掴むと、そのまま路地の方に引きずっていった。



嫌でしょうがないのに抵抗が出来ないまま、何度も地面に足を打ち付け、情けない足取りで連行されていくことしか出来ない。




本当に死にそうなくらい痛いんだけど……。


貴ちゃんは、きっと気付いてもいないし、焦りもしていないだろう。


これくらい平気と思っていそう。


こんなの今まで何度もあったし。

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