愛の果て

第75話

「花音さん、やっと痣が引いてきましたね」


「まぁね。またすぐ妖怪に戻るかもだけど」


「毎度、そこまでボコるなんて鬼っすね、彼氏」




タコパから数日経った、夕暮れ時。


職場のレストランの休憩室で仕事を終えた仲間と軽口を叩く。



あれから私は自分の家に帰らず、実家で寝泊まりしている。



上げ膳、据え膳でゆっくり療養。


その甲斐もあってかオバケみたいに腫れてた顔もマシになり、やっと出勤することが出来た。



まだ薄っすらと痣が残っているけど、まぁ、形容範囲だ。


メイクをすれば、そんなに目立たない。




「しかし、大丈夫なんですか?彼氏からの連絡を無視して」


「んー…、あんまり大丈夫じゃないかも……」




心配そうに顔を覗き込んできたバイトの女の子に、苦々しい笑みを返す。



そうだ。


正直、かなりマズイ状況なんだよね。



あの日からずっと貴ちゃんの電話を無視しまくってるし。


アドレスも変更して、ラインもブロックして、徹底抗戦ならぬ徹底逃亡。



家にも帰っていないから、貴ちゃんは私と全く連絡がつかない状況だ。


きっと気持ちのぶつけ先がなくて、怒りは相当溜まっているだろう。



しかも、あのタイミングで電話が掛かってきたことから察するに、浮気相手のギャル子が村田のことを貴ちゃんに話したのは明らかだし。



絶対に今頃ぶちギレてる。


見つかったら殺られるかも知れない。

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