第66話

右には自分の浮気相手、左には彼氏の浮気相手。


微妙すぎる。



私も去らないし、村田も去らないし、女の子も去らないし、全員で突っ立ったまま、ひたすら沈黙。


何も言って来ないのに姿だけはジロジロ見られて、鬼のように気まずい時間が流れている。



敵に弱みを握られた気分。




「おーい。花音。これも追加で~」



そしたら通路の端から野太い声が聞こえてきた。



流れるように視線を向ければ、二番目の兄貴“治郎じろう“が、柿ピーの袋をカシャカシャと振りながらコチラに向かって歩いてくる。



この微妙な雰囲気をぶち破るように、物凄い笑顔で。



なんでいるの⁉と驚き半分、助かったと安堵する気持ち半分、突如として現れた救世主に皆の視線がつどう。

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