第52話
「なんで兄貴?」
「そう言えば兄貴たちの姿がチラついて冷静になるだろうから」
「あ、そっか。ヤツはうちの兄貴たちが苦手だしね」
「でしょ。少なくとも持ってこいとは言われなくなると思う」
納得したように頷いた私に、村田は手土産のシュークリームを差し出して薄く笑った。
珍しい。
含みのある笑顔だ。
悪村田の完成。
しかし、いい案だ。
兄貴が保管してると言えば、貴ちゃんの口は閉じると思う。
何と言っても彼は兄貴たちのことが苦手だ。
万が一にも、自分のもとに来るかも知れないって可能性があれば、卒アルの1つや2つあっさりと諦める。
うちの兄貴ときたら気性は荒いし、喧嘩早いし、馴れ馴れしいし、おまけに少しばかりグレてるものだから。
似たタイプの貴ちゃんとは全く馬が合わないのだ。
会えば威圧的に接するし、おちょくるし、脅すし、そういうのが苦手な貴ちゃんは嫌がって極力会いたがらない。
それこそ兄貴がいるときに電話をすると、何だかんだ言い訳を並べてすぐに切るくらいだ。
持ってくるって〜と言った日には、風のように逃げると思う。
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