第51話

「……まさか俺とのことがバレて、そうなったんじゃないよね?」


「違うって。本当に目付きが気に入らなかっただけでしょ」


「だったら、いいけど」




複雑そうな表情を浮かべる村田にスリッパを差し出し、何でもないことのようにヘラヘラと笑う。



心の中は“気にしないで欲しい”って気持ちでいっぱいだ。


変に気を使って距離を空けられたら、それこそメンタルが病む。



殴られるよりも嫌だと思う。




「あ、でも……。村田がどんなヤツか気にしてたっぽいから。一応、身辺には気をつけて」


「なんで?ついに俺が男だってバレたの?」


「いや。存在は知らないけど。村田の住んでいるマンションに私が入っていくのを見た人がいるらしくて」


「へぇー。それで俺に興味を持ったんだ」


「そう。村田の顔が見たいから卒アルを見せてって言われてさ」




玄関から家の奥に招き入れつつ、思い出したように苦笑いを浮かべる。



そこのところ知らせるべきか迷ったけど、村田に何かあったら嫌だから共有することにした。



ホント、どうしようって感じだし。



痛いところを突かれたわ。



まさか見せるわけにもいかないし。


かといって見せなかったら、また殴られそう。



そう悩んでいた私に村田はサラリと言った。




「なら、花音の兄貴が卒アルを保管してるってことにすれば?」って。

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