第21話

「可愛いやつめ」




照れてる村田が可愛くて、ケラケラ笑いながら負ぶさるように抱きつく。




なるほど。これが浮気真っ只中の貴ちゃんの気持ちか。



何となくわかった。



浮気したって別に抵抗もなければ、罪悪感もない。



本能の赴くまま。



とにかく“したい”だ。



現に今だって貴ちゃんの顔なんて思い浮かばない。



村田の顔しか見えてない。




「もういいから。離せって」


「やだ」


「マジで離せって、花音」


「無理」


「ほんと…。さっきから何?いい加減にしろよ」


「え?」


「俺を何だと思ってんの」




ガッと腕を掴まれてドキッと胸が音を立てる。



や、やばい。怒った…?村田が?



温厚な村田の突然のキレに心底ビビる。



しかし、殴られる……と咄嗟にカラダを身構えたが、殴られはせず。



むしろ、服の中に手を突っ込まれて何やら状況が少し違うと気付く。





「もういい。マジで無理。知らね」


「ちょっと、村田」


「誘ったの、花音だから」


「待っ…、んんっっ」




止めようとした声が唇で掻き消される。



深まっていくキスに頭が追い付かない。



気付けば服まで脱がされてる始末。




あら?スイッチ入っちゃった?なんて気付いた頃には時既に遅しで。



止めても止まりはせず、そのまま体を重ねてしまった。

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