国士無双【完】

双

第12話

「酷いよ。あっくん、最低っ！」

パチンッと派手な音を立てて、あっくんの頬を叩く。

ショックだ。

悲しすぎて止（と）めどなく涙が出てくる。

頬に流れた涙を手で脱ぐって睨めば、あっくんは“うっ”と居心地が悪そうにうろたえた。

キスしちゃうなんて……、酷い。

初めてだったのに。

腹立たしくて叫んでもあっくんは黙ったまま。

口を開こうともしない。

ばつが悪いのか、もう興味がなくなったのか、どっちなのか、わからないけど、気まずそうに目を逸らされた。

でも、私の心はボロボロで。

「あっくんにとってはワンナイト･ラブのつもりでも、私は……」

「……わかんねーかなぁ」

「……はい？」

「だから。ここまでしたのに、まだわかんねーの？」

泣き喚く私に、あっくんは消え入りそうな声で呟いた。

酷いことをしたのはあっくんの方なのに。

私を見つめるあっくんは、私よりも傷ついた表情をしている。

「わかんないよ……」

わからない。

あっくんの気持ちが。

どうしてこんなことをしたのか、どうして辛そうなのか。

全然わかんないよ。

「どうすれば……、わかってくれんだよ」

泣き崩れる私を抱き寄せるあっくんは、いつもと違って弱々しい。

「どうすれば、お前は俺のモノになんの？」

切ない顔で問い掛けてきたあっくんに胸がギュッと切なくなった。