第2話

「捲るのはナシでしょう」


「なら来い」


「えー」


「来いって」




渋れば素早く階段から飛び降りて私に抱き着いてくる、あっくん。




恥ずかしいからヤメて欲しい。




たまたま通りかかった人まで驚いて“キャー”って叫んでるし。




まぁ、叫んだところでこの男は、




「煩せぇよ。邪魔すんじゃねぇ」




キレるだけ。



自分の気が済むまで絶対に私を離してくれない。




大体、この男の本性はこれじゃない。



簡単に言えば……。




「なー?遥奈も邪魔されたくないよな?」




甘えたってことなんだけど。




生傷のえないヤンキーで威張り散らしているくせに、昔からこっそり私には甘えてくるんだ。




正直、拍子抜けする。



男はハードボイルドな方がいい。




「な?邪魔だろ?」




何も答えない私に痺れを切らしたのか、あっくんはちょっぴり不満気にたずねてくる。




「別に私は……」




邪魔だと思ってないけど。



むしろ、邪魔してくださいって感じなんだけど。




「ごめんなさい!」




そう思うのに、あっくんに睨まれた女の子達は、そそくさと立ち去ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る