第94話

「あ、原谷君。実は知り合いに校内を案内して貰っていたんですが、いなくなってしまって……」


「マジ?どっか行ったんかなぁ」


「さぁ……。置いていくような人じゃないんですが」



しょぼーんと肩を落とし困った顔を浮かべる香織ちゃん。


それを見たツンキーはヘラヘラと愛想の良い笑みを浮かべると、ドンッと自分の胸を叩いた。



「良かったら俺が案内するよ。ちょうど暇してたし」と。




貴様、慶彦を閉じ込めたのはそれが目的か……。


きっと見ていた全員が心の内でそう思っただろう。


生徒会室で待機しているピーコも今頃「嘘つき!この最低男」と、ギャーギャー怒っているに違いない。



しかし、ツンキーはニヤニヤ笑ってご機嫌だ。


自分が慶彦を閉じ込めたのに。


あまりにもバカらしすぎて面白かったのか鈴花が隣で吹き出した。



小春はドン引きを通り越して無の表情になっているけど。




「よし。じゃあ、証拠も押さえたことだしね。そろそろ仕上げと行こうか」



理央から突撃サインが入る。


それと同時に私、小春、鈴花の三人は隠れていた階段から廊下へ飛び出した。


その後ろから颯もカメラを隠して出てくる。


雄大は未だ物陰で撮影中。


理央もモニターの前。


下準備は万端だ。ここからが本番。

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