第95話
「あれー?おかしいなー。二人だけ?」
あの日のツンキーの口調を真似ながら、理科室の鍵を指でクルクルと回し、皆と一緒に二人の傍に近づいていく。
それを見たツンキーが物凄く嫌そうに顔を顰める。
「はぁ?お前らどっか行けって」
「なんで?」
「面倒くさいから」
「面倒くさいとは?この鍵のことがかね?」
「知らねーし、そんな鍵。話しかけてくんなや」
微かに声を震わせながらツンキーは必死な形相で私たちを追い払おうとする。
真面目にどこかに行って欲しくてしょうがないんだろう。
しかし、退きはしない。
「これはね、理科室の鍵なんですよ」
「ああそうかよ!だからどうした?消えろ」
「いいんですか?消えちゃって。早く開けた方がいいのでは?」
「意味わかんねぇ。俺には関係ねぇし」
焦ったように口調を荒げながら、ツンキーは香織ちゃんに「行こ」と言って逃げようとする。
ちゃっかり香織ちゃんを連れて行こうとしているところが絶妙にせこい。
鈴花が呆れながらも話を続ける。
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