第93話
「ここで香織ちゃんはトイレ、慶彦は理科室に入って。颯と雄大はそのままツンキーを撮影、他の三人は階段を下りて物陰で待機」
再び理央から指示が入り、各々忠実に動いていく。
全体を動かしている理央はドコにいるかというと視聴覚室だ。
この一連の流れを校長、教頭、学年主任、澤田君の両親、ツンキーの両親と共にモニター越しに見ている。
この間、撮った目撃証言の動画をオープニングに流して始まったこの復讐劇。
何も知らぬのは理科室の鍵を外から閉めたツンキーただ一人。
「閉めたね」
「閉めましたね」
「うわぁ……」
いそいそと鍵を閉めるツンキーの間抜けな姿が皆の目に映る。
隣で一緒に見ていた小春は目を細めてドン引き。
鈴花はあっちゃーって感じ。
颯は上手くいったと言わんばかりにしたり顔だ。
雄大はビデオをいい位置で撮るのに夢中で、慶彦は今頃、鍵が閉まったことに気づいてゲームのスイッチを入れている頃だろう。
理央は一瞬吹き出した笑いを一生懸命、咳で誤魔化していた。
腹黒王子め。
「あれ?慶彦さん?」
程なくしてトイレから出てきた香織ちゃんの慶彦を探す声が廊下に響く。
その姿を階段の方からこっそり覗いていると、ツンキーが真面目な顔付きで香織ちゃんに近づいていくのが見えた。
いったい何をするのかと思えば「あれ?香織ちゃん?こんなところでどうしたの?」と、白々しく驚いた振りをして声を掛けている。
香織ちゃんから絶交され中のはずなのだが。
あの様子じゃ綺麗さっぱり忘れている。
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