第87話
「武将じゃありません。くノ一です!」
「おー、忍者が何の用だ?」
「話しながら一緒にお昼を食べようと思ってお弁当を持って来ました」
「アホか。見つかったらマズイだろ」
「大丈夫です。誰か来たら用務員のオジサマが草刈り機を発動させて教えてくれます」
「まさか買収したのか」
「ふふふ。地方限定、三種の珍味で落ちました」
「ほんと悪知恵だけは働くなぁ……」
感心したように笑う澤田君にニンマリと笑い返す。
買収する以前に用務員のオジサマは澤田君の件に関して協力的だ。
事情を言えば歯をキラーンと輝かせて「任せろ」と言ってくれた。
使っている草刈り機の音は爆音だし、なればすぐに気づくだろう。
ついでに声も消せる特典付き。
「まぁ、いいじゃないですか。お昼くらい」
「どうやって一緒に食べるんだよ」
「ロミオとジュリエット方式で」
「ロープで上ってくんの?」
「いえ。そこまで体力はないんで遠隔的なあれでいきましょう」
「つまり窓越しな」
さすがに付き合いも少し経つとちゃんと意図がわかるようになってくるらしい。
澤田君は小さく鼻で笑うと、お弁当を広げ始めた私に付き合って窓から少しだけ半身を乗り出した。
傍から見れば変な光景。
だけど、二人とピーコしかいないし、気にしない。
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