第84話
「あ、私、階段を上っていく人なら見たよ」
場所は代わり学校の門の前。
ビデオカメラを持って聞き込みをしていた慶彦に女生徒の一人が目撃情報を話し出す。
その子が言うには部活の練習終わり、補習に出ていた友達と一緒に帰ろうと教室まで行ったところ、準備室がある方面の階段を上っていく生徒を目撃したらしい。
そのときの教室はまだチラホラ人がいる状態。
時間的には準備室の鍵が閉められる少し前。
準備室の周りはこの時期、使われていない教室が多いし、犯人の可能性が高い。
「顔とか体型とか覚えてる?」
「それは見てないや。一瞬だったし」
「そっか。それは残念」
「でも、男子生徒だったのは間違いないよ」
「制服的に?」
「うん。それに髪がツンツンで珍しい髪型だった」
探偵並みに聞き込みをする慶彦に笑顔で語る女生徒。
他の子も同じ人を見たと言い出し、慶彦はカメラを構えてご満悦。
部活に来ていた生徒が意外と穴場だった。
「んー、そう言えば、誰かが補習終わりに準備室の鍵を借りに職員室に来ていたな」
「本当ですか?」
「あぁ。中に人がいるのに気づかず鍵が閉められたとか言って」
「その生徒は澤田君でした?」
「いや。別の生徒だった。それで中山先生が様子を見に行ったから……」
近くにいた先生もそのときの状況を語り出す。
そっちは時間的に私が澤田君へ声を掛けたときよりも少し前だ。
あのとき、澤田君の近くを歩いていた部活帰りの生徒の顧問だから間違いない。
ちょうど解散して職員室に戻った直後だったみたいだったし、その人たちが着替えたりする時間を換算すると、鍵を取りに行った生徒の方が私が騒ぐより先に閉じ込められていることを知っていたのは確実。
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