第81話

澤田君が転校してしまったら当然寄付金は打ち切りになり、学校としてもやり繰りが厳しくなってギスギス。


行事だってしょぼくなっていき、生徒は不満で荒れ、自棄になった校長の手によって、一旦は廃止された恋愛禁止の校則だって復活してしまうかも知れない。


とにかく私たちが悲しいだけじゃなく、学園中の生徒がつまらない暗黒の学校生活を送るはめになる。


ツンキーただ一人の手によって。


そんなの許せない。



「そもそも澤田君に付きまとっていたツンキーに非があるのに」


「まぁね。そこは先生たちもわかってるよ」


「それにほら、菜々ちゃんを閉じ込めた件もあるし、少しくらい配慮してくれてもよくない?」




議事録を作成していた小春こはるが納得のいかない顔で理央に訴える。


せめて無期じゃなく期限付きで、と。



ツンキーに人一倍不満を抱える彼女からすれば、本当に腹立たしくて許せないことなのだろう。



だが、理央は困ったように首を横に振る。



「それがツンキーの方は何もやってないって否定しているらしくて」


「はい?自分からやったって言ってたのに?」


「先生の前では認めないんだってさ。証拠がないとか訴えてる」


「それでも前科が1回あるじゃん。菜々だってそう言ってるし」


「そうだけど、菜々が澤田君を庇っている可能性もなくはないからね。先生からしてもそこは慎重になりたいところなんだよ」



憤慨ふんがいする鈴花すずかに理央が苦笑いを浮かべる。


本当にそう。


ツンキーが犯人だと証明するような証拠が何もないんだよ。


確実に犯人はツンキーで間違いはないんだろうけど、証拠がない以上は先生たちも詰められないのが現状。



もっと言ってしまえば、南京錠は扉に掛かっていたし、閉めることは誰にでも可能。


いくらツンキーが鍵を持っていたからって閉めた証拠にはならない。


開けるために持っていたと言われたらおしまい。

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