第79話

「……うぜぇ」



ツンキーに絡まれた澤田君はガンッと物騒な音を立てて、怒りを発散させるように壁を叩く。


やばい……。


かなり苛ついている。


ピンチだ。



「澤田君」


「マジで腹立つ」


「澤田君ってば」



言葉が出てこず名前を連呼。


さすがの私もふざけられないくらいの怒りようだ。


しかも怒っている理由が自分なだけに頭が回らない。


どうしてそこまで怒っているのか謎。



そりゃ閉じ込められはしたけど、すぐに出て来れたし、何もそこまで怒らなくても。


そうは思ったが、止めたって意味はなく。



澤田君はツンキーを殴ってしまった。



「うわぁ……」



軽くドン引き。


左の頬に一発、お腹に一発、蹴り二発。


ガッ、ゴッ、なんて鈍い音を立ててツンキーを殴る澤田君。



ツンキーも殴り返そうとするが、追いつかずに殴り返されている。


散々、煽っておいて一発も返せないとは何事か。



「澤田君、ちょっと落ち着いて」


「うるせぇ!」


「いやいや、マズイって!」



一応、止めたが無駄だった。


澤田君は止まらない。


まぁ、そうなるのも仕方ないか。


今まで散々、嫌がらせをされてきたんだし。


それは理解出来ているが、フルボッコにしていて焦る。



「おい!お前らやめんか!!」



しかもタイミング悪くゴリ山に見つかってしまった。



来るのが遅い!


それならさっき来てほしかった。


そしたらピンチを救ってくれた王子様だったのに。


今はただの厄介な目撃者だ。


そう思いながら澤田君とツンキーを引き離すゴリ山の背中を焦る気持ちで見つめた。

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