第78話

しかし、澤田君はそのまま扉を蹴って鍵を壊してしまった。


扉が開き、神妙な面持ちをした澤田君と目が合う。




「澤田キュン。助けてくれてありがキュン。イケメンに見えます!」 


「いや、今はそういうのいいから」


「……はい」


「それより、なんで閉じ込められてんの?」


「さぁ……。私もよくわからないです。いきなり閉められたんで」




真面目に答えた私に澤田君は短く「そっか」と呟いた。


視線を逸らして、溜め息を吐いて、不満そうに頭をクシャクシャ。



機嫌が悪そう。


かなり怒っていそうだ。


何だか気まずい。



「あー⁉もう開けちまったのかよ」



なのに空気の読めないバカが廊下の隅からひょっこりと顔を出す。


このツンツン頭が。奥に引っ込んでろ!と真剣に言いたいところを我慢して、目の前に現れたツンキーを真顔で見つめる。



無言の圧。真顔のテレパシー。


今すぐ逃げろのサイン。


しかし、鈍感なツンキーは空気を読まずに澤田君にちょっかいを出し始める。




「うぃ〜!閉じ込められパート2」


「またお前か」


「そうだ。あのまま終わる俺じゃない」




お願いだから、ちょっと黙ってろ。


そう思う私の気持ちを無視してツンキーは意気揚々とこちらに近づいてくる。


準備室の鍵をクルクルと指で回しながら、楽しそうにニヤニヤと笑って。




「お前か、犯人は」


「そうだ。俺以外に誰がいる」


「しつけぇんだけど」


「俺からしてみればしつけぇのはお前だ」




全日本うぜぇヤツランキングがあれば堂々の1位に輝けるくらい鬱陶しいふざけた顔で、ツンキーは澤田君の肩を掴む。



おいおい、ヤメておけ!と顔が強ばったが、私のことなんて完全に無視。


存在すら忘れられている。

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