『補習』

第72話

「xとかyとか数字の世界に英語を持ってくるのは卑怯だと思いません?」


「ごめん。何が卑怯なのか全然わかんねぇ」



夏休みが始まった7月下旬。


一緒に補習を受けていた澤田さわだ君にコソコソと愚痴る。



そもそもxとかyとかいったい何?


存在自体が謎。


意味がわからない。


そう思うが頭のいい澤田君は私の抱える疑問の方が理解できないらしい。



とにかく言われた通りに当てはめていけば解けるからとか小難しいことを言ってくる。




苦笑いまで浮かべちゃって。


これだから頭のいい人は……。と心の中でこっそり溜め息。


しかし、ちゃんと理解できるまで教えてくれるんだから、やっぱり澤田君はいい人だ。




ちなみに頭のいい澤田君が何故補習なんか受けているのかというと、授業に出なさすぎたから。


テストの点の良さと校長の激甘な配慮のおかげで、どうにか留年せずには済んでいるけど、現実的には結構ギリギリ。


だからこうやって赤点を取った私と同じ授業を受けている。



個人的にはラッキー。


わからないところを教えて貰えるし、クラスメートになったみたいで新鮮。楽しい。



だが、問題が一つ。




「おのれ澤田ァ。絶対に許さん」



斜め前に座ったツンキーがせっかくの楽しい気分を邪魔してくる。


文字を書いてはシャーペンの芯をバキバキに折り澤田君への恨み言をブツブツ。


開いたノートには【澤田成敗】とビッシリ書かれてある。

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