第71話

「あ…、そいつならアッチに行ったよ!香織ちゃんっ」


「アッチ?校舎の中?」


「そう!多分、教室の方に行ったんじゃないかなぁ?」


「へー。どんな人なの?」


「そりゃ、いつも誰にでもツンケンしているツンツン男だよ」


「なるほど。それでツンキー?」


「そう!」



物凄く焦った顔を浮かべながらツンキーはしどろもどろ嘘を言って校舎を指差した。


香織ちゃんは信じきった顔でマジマジと校舎を見つめる。



そうじゃない。


その静電気ヘアーが由来だ。



そう思ったが敢えて全員が黙っていた。


憐れなツンキーは嘘を言ってこのピンチを切り抜けるつもりらしい。




「その人、直ぐに出てくるかなぁ?」


「出てくるも何もそいつ……」


「出てこないと思う!」


「えー」


「危ないから後で俺が倒しておくよ!」




素直に事実をバラそうとした澤田君の声を遮り、ツンキーは勇ましい表情を浮かべてドンッと胸を叩いた。


犯人が犯人を倒すと勇敢に語る姿は滑稽だ。



皆も思うことは同じらしく呆れたように笑っている。


しかし、ツンキーの憐れな嘘を許さない男がココに1人。



「だから、ツンキーはそいつだよ」


「え、原谷君がツンキー?」


「そうだ。どう見たってその頭からしてツンキーだろ」




ドン引きする香織ちゃんに事実を告げる澤田君。



「原谷君がお兄ちゃんを……。しかも私に嘘まで吐いて」


「香織ちゃん……」


「お兄ちゃんの敵はすなわち私の敵!絶対に許さない!絶交ですっ」



ビシッとツンキーの顔を指差し、香織ちゃんは恨みたっぷりに「大嫌い」とツンキ―を睨む。



「あああ、くっそ、澤田ァァァッ!」


悲しみにブチギレるツンキーの叫び声。


新たな因縁の始まりである。

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