第68話
面倒だ……。
いい加減、諦めてくれればいいのに。
「お前の所為ですげぇ面倒な目にあったんだぞ!」
「へぇー。それはご苦労さん」
「ああ?お前が逃げ回るから厄介なことばっかやるはめになってるんだからな」
「知るか。自分がやったことの結果だろ」
吠えるツンキーに澤田君は続々と正論を言い返す。
さすがのツンキー様もそこは自覚があるのか悔しそうに「チッ」と小さく舌打ちをした。
その様を無言の圧を掛けながら見つめる。
心の中は恨む気持ちでいっぱい。
怨念を込めるように目を細めていたら、それに気付いたツンキーから殺気立った目で睨まれた。
その瞬間、澤田君の腕が伸びてきて何故だか背中の後ろに隠される。
え、何?
もしかして庇われた?
「あわわ、庇われキュン?」
「違うつーの」
完全に否定されたが内心動揺。
突如として訪れた胸キュン展開にドギマギしながらも、澤田君の背中越しにツンキーの様子を覗く。
「俺と勝負しろ」
「断る」
「俺はお前に勝たなきゃいけねぇんだ」
「そうか。じゃあ、お前の勝ちでいいよ」
「それじゃ意味ねぇっ」
せっかく勝ちを譲ろうとしてくれているのにツンキーは澤田君からの提案を突っ張ね、お馴染みの闘牛ポーズを取る。
そんなツンキーの頭をガッと片手で押さえ、澤田君は表情薄く溜め息を吐いた。
澤田君からすれば怒りすら湧いてこないのが現状だろう。
さっさとラーメンを食べに行きたいと思っていそうだ。
そう思っていた私の耳に可愛らしい声が聞こえてくる。
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