第65話

「それにしても澤田君にかなり執着しているね」


「確かに。以前から確執があるような発言が多々ありました」


「何か心当たりはないの?」



疑問で溢れ返った颯が澤田君に問うような視線を投げる。


尋ねられた澤田君は記憶を辿るように考え込む。


しかし、少し時が経つと小さく息を吐いて「わかんねぇ」と呟いた。



「あのツンツン頭には見覚えがある気がするんだけどな」


「まぁ、あの髪型は一度見ると印象に残りますしね」


「だけど、どういう繋がりがあって、そのときに何をやったかは覚えてねぇんだよ」


「まったく?」


「全然。基本的に絡んでくるのはあんなヤツばっかりだから。記憶がごちゃ混ぜになってて曖昧」



『はぁー』と溜め息を吐き、澤田君は背もたれにでもするように私の肩に寄りかかってくる。



様子を窺うように顔を覗けば瞼を伏せてかなりお疲れな様子。表情も暗い。


まぁ、あんな人ばかりにあれだけ振り回さればそうなってしまうのも無理はないけど。



しかし、羽交い絞めにされて以来、距離感がバグったのか、こういうスキンシップが多くなった。


女として見られていないのか、距離を縮めたくてやっているのか、それとも心のピースが嵌まってしまったのか、いったい正解はどれだろう?



私も私で謎。


こうやってベタベタ来られても全く悪い気はしないんだから。不思議だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る