第52話

「お前……。いかにもガリ勉みたいな見た目をしておいて、そのコミュニケーション能力の高さはいったいどういうことだよ」


「さぁ……。高いですかね?別に普通だと思いますけど」


「どう見たって普通じゃねぇだろ」


「んー、いて言うなら、父、芸人。母、女優。叔父、マジシャン。叔母、演歌歌手。祖父、政治家。祖母、企業役員の家庭で育ったんで。それでですかね?」


「何だそれ。トリプルMIX無敵コンボみたいな家庭環境だな……」



サラリとお宅事情を語った私に澤田君は引き攣った顔を浮かべる。


別に引かなくたっていいのに。


それを言うなら澤田君ん家の方が凄いと思う。


誰もが知っている大手財閥の息子なんだから。




「それだけ周りに凄いのがいるってことは、お前も大物になりそうだな」


「いいえ。平凡ですよ、私は」


「そうか?意外と眼鏡を外すと別人みたいになるとか、そんな設定はねーの?」


「全然。外したって何の変わりもありませんし、素朴そぼくなもんです」


「へぇ。どんな?」


「こんなんです」



ほら!と眼鏡を外して澤田君に素顔を見せてみる。


そこには絶世の美女……ではなく素朴な私の姿が。



「あんまり変わんねぇな」


「そりゃそうですよ。そんなものです」


「まぁでも、嫌いじゃねぇわ」


「そりゃどうもです」



ヘラヘラと笑って眼鏡を掛け直した私に澤田君はちょっとだけ微妙な顔をした。


反応が薄いなー、って。

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