第51話

「おい…。菜々」


「キャー!澤田っち来たー!」


「菜々、澤田君が迎えに来たよ」


「早く早く」



教室に顔を出した澤田君に女子達が派手に騒ぐ。


注目を浴びた澤田君は気まずそう。


普段は怯えた顔を向けられることが多いだけに好奇心いっぱいな顔は慣れていないはず。



「何です?」


「いいから。ちょっと来い」


「来い、だって」


「萌える」


「行ってらっしゃい〜」




ちょいちょいと手招かれて教室のドアの前。


言うことすこと女子からからかわれた澤田君は、ひっそりと私を廊下の端っこに連れていく。



不良のくせにコソコソとしたりなんかして……と思ったりもするが、私含め生徒会のメンバー全員が手当たり次第に澤田君のヒーロー話をしまくった所為で澤田君はある意味、肩身が狭いらしい。



現に私と歩いている今も輝々とした目で女子達から見られている。



「菜々ちー。デート?」


「あ、うん。校内デート」


「そっか。ごゆっくり」



声を掛けてきた女子に適当なことを返しながらヒラヒラと手を振る。


すると、澤田君が物珍しげな表情で私を見てきた。

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