第50話

ここまでは全てツンキーの目論見もくろみどおり。



だが、しかし、ツンキー。


残念だった。



敵に回した相手が私だったことを後悔するがいい。




「それでね、そのとき澤田君が“こいつには手を出すな”って菜々ななの前に早速と現れてさ〜」


「そう。ツンキーからボコボコに殴られそうになっていた私を助けてくれたの」


「キャー!澤田っちカッコイイ〜!」


「やばいっ!推せる〜っ!」



教室のド真ん中。鈴花すずかとタックを組み、ツンキーに絡まれたときの出来事を少女漫画の主人公目線でクラスメートに言い回る。


頬を染めて、ときめきたっぷりに話す私にクラスメートの女子達は大盛り上がり。


ツンキーの流した噂は霧のように霞み、すっかり私が澤田君から助けられたって話にすり替わっている。



ふふふ。ツンキーめ。


乙女の胸キュン好きをナメるなよ。



そちらの中では少年漫画のような展開にしたかったのだろうが、こちらの愛読書は少女漫画だ。


そちらの界隈かいわいであくどく暴れまわっているであろう卑劣な悪役は、こっちの界隈では無敵の俺様ヒーローとして描かれているのだよ。


視点が変われば立ち位置も立場も価値観も変わる。


この恐ろしさ、その身をもって知るがいい。と、心の中でダークに叫ぶ。



澤田ヒーロー爆誕である。

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