『少女漫画目線』

第49話

澤田さわだにボコられた」



ツンキー襲撃事件があって数日が経った頃。


澤田君にあしらわれたツンキーは、悔しかったのか事実を捻じ曲げた噂を流し始めた。



ツンキー目線で言えば、あれから何度か襲撃をしたものの、澤田君はまったくと言っていいほど相手にしてくれず。


喧嘩を売っても鼻で笑われて終わり、殴りかかっても軽くかわされ、私をダシにしようと目論もくろむもタイミングが悪いのか捕まらない。


このままじゃ彼が言う正々堂々とした喧嘩はいつまで経っても出来ず、自分は一発で沈められて負けた男のまま。



それが余程恥ずかしかったのだろう。


だったら物理的に視界から消してやれ。と言わんばかりに『俺は何もしてないのにいきなり澤田から殴られた』と、他生徒を捉まえては熱心に言い回っている。



私にブチギレた結果そうなったのに、そこは隠しているみたいだ。


そもそも殴ったんじゃなくて払い除けただけなのだが、ツンキーの中では殴られたことになっている。



まぁ、別にそんな噂が出回ろうが今さらな気もするけど、澤田君の更生を目標に動いている私達にとっては少々厄介。


ただでさえバチクソヤンキーな澤田君は悪いように思われやすいし、殴られたなんて噂が飛び交っていたら更なるトラブルも生まれやすい。



保護者から問い合わせが来た日には悲惨。


無視もできないし、切り捨てもできないし、校長はもれなく板挟み。


教員一同、職員室の中で耳を塞ぎながらヒヤヒヤと頭を抱えている。

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