第40話

「まぁまぁ、澤田君。一旦、座りましょうよ」


「そうだよ〜。落ち着きなって」



呼び止めた私に便乗するように、それまで体育祭の予算計画書と睨めっこしていた会計の鈴花すずかが顔を上げる。


出ていこうとしていた澤田君は振り返って不満そうな顔を浮かべた。


ついでに鈴花と一緒に睨まれる。




「落ち着けっていわれてもなぁ」


「平気、平気。無視しておけばいいって」


「良くねぇだろ」


「良いんだよ」



食い下がる澤田君に鈴花は毅然とした態度で言い返す。


そしておもむろに立ち上がったかと思うと、生徒会室のドアに備え付けられた二つ目の電子錠の鍵を中からロックした。


ピピッと音を立てて、さらに頑丈になる生徒会室のドア。


実質、監禁状態。



そんな行動に出た鈴花を澤田君は変なものでも見るような目で睨んでいる。


理解できない、と言いたいんだろう。


しかし、鈴花は折れない。




「無視したところでヤツらは諦めないだろ」


「だとしても外の連中に対して君がキレる必要はないから」


「俺が行かなきゃ止まらないし」


「大丈夫。君が行かなくてもじきに止まるよ」



怒る澤田君を軽くあしらいながら鈴花は意味深な顔でヘラヘラと笑う。


時を同じくしてドアの向こうから、ゴリ山こと体育教師の内山の「貴様らぁぁぁぁぁ!何をやってんだぁぁぁぁ!」と、怒鳴る声が聞こえた。

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