『愛でる会』

第38話

「そっか。良かったですね。クラスメートと打ち解けられて」


「いいちゃいいけど、何かな……」


「無駄に気を使われまくるよりは、いいじゃないですか」



時は過ぎて放課後。


体育祭の準備に向けて大忙しの生徒会室。


クラス旗について書かれたプリントに目を通していた雄大ゆうだいが、昼間の出来事を話す澤田さわだ君をなだめながら柔らかい微笑みを浮かべる。



私に勉強を教えているとクラスメートに知られてから数時間。


澤田君のクラスでの居心地は改善されたらしい。



そのおかげか昨日よりも表情が明るくなって、心配していたコチラとしても嬉しい限り。


菜々ななの所為で散々からかわれた!と愚痴られはしているけども。



でもまぁ、何だかんだ文句を言いつつ、私が作った手作りピーコ弁当を、あの空気の中で普通に食べてくれた澤田君は間違いなくいい人だ。



校長だって澤田君の雰囲気が丸くなってきたと大喜びしている。


私達のミッションはかなり順調。


しかし、だ。




「おらぁ、澤田ぁっ。ここにいるのはわかってんだぞ!」


「隠れてないで出てこいや」


「へいへい澤田くぅん!開けてよぉ!」



ドンドンドンと生徒会室のドアを叩く音。蹴り飛ばす音。ガチャガチャと揺らす音。


激しい。


澤田君に構って貰いたい不良たちが闇金の取り立てなみに煩い。



不測の事態に備えて我が生徒会室の扉は頑丈かつ、電子錠でロックをされていて絶対に開かないというのに、必死にこじ開けようとしている。

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