第36話

しかし、はたして本当にそうなのか?と疑問。



だって実際の澤田君はわりと面倒見がいいし、心が広いし、優しい。


ふざけても殴ってこないし、本当は意外と温厚じゃないかと思えてきているくらいだ。


ピーコだって懐いているし。



それをクラス全体が一致団結するほど、そこまで気遣う?


ただの言い訳で本当はイジメを隠しているだけなんじゃ……?と、疑う気持ちが芽生える。



だから確かめるような視線を近くにいた女子に送った。


本当なの?って。


そしたら肯定こうていするようにガクガクと首を縦に振られた。


さらに全員が喉をゴクリと鳴らし、それが事実だと認めるように頷く。



そのまま無言で重なる澤田君の呆れた視線。


なんだ。そっか。


私の勘違いだったみたい。





「もー、まぎらわしい。それならそうと早く言ってくださいよ」


「だから最初から勘違いだって何度も言ってんだろ!」


「だってまさか、クラス全員が澤田君を怖がってるなんて夢にも思わなかったんですもん」


「はぁ?なんでだよ⁉」


「そりゃマジックを習いに私のところへ弟子入りしてきたくらいですし」


「おい、待て。俺はお前に弟子入りなんかした覚えはねぇぞ」



サラリとバラした私に澤田君は信じられないって顔をした。


あれだけピーコの餌やりに夢中になっておいて否定するとは薄情な。



確かにやり方を知りたいと頷いただけで弟子入りするとは一言も言ってなかったけど。

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