第35話

「菜々。お前、今日という今日は……」


「いえいえ、みなまで言わずとも。私が来たからにはもう大丈夫ですよ。澤田君」


「あ?」


「ちょっとあなた達!いくら澤田君が最低最悪なバチクソヤンキーだからって、クラス全員で仲間外れにするなんて酷いじゃないですか!」



傍に寄ってきた澤田君を背中に隠し、怒りをむき出しにしながら3組の生徒の前に出る。


クラスメート達はポカーンとした顔で惚けているが許さない。


そう息巻く私の頭を澤田君がチョップする。




「だから違うって言ってるだろ!」


「何が違うんです?集団無視をされて落ち込んでたんでしょう⁉」


「落ち込んでねぇし、されてねぇって」



殴った私の頭をグシャグシャに撫で回しながら、澤田君はイジメられている話を必死に否定する。


教室に入ろうとしていた私の体を廊下に押し戻して「どうどうどう」と、馬でも落ち着かせるように背中まで叩いて。




「お前はホント優しいのかアホなのか」


「甘いですよ。澤田君。ここはキッチリ怒らないと」


「アホか。怒ったら余計にビビらせちまうだろ」


「はい……?」


「こいつらはただ、俺の機嫌が悪いと思って気を使ってくれてただけだし」


「ん?澤田君の怒りが沈まるのを皆で見守ってたってことですか?」


「そうだよ。さっき授業中に襲撃を食らってイラついてたから」



すっと怒りを消した私に呆れた顔を向けてくる澤田君。


確かに不良たちが澤田君を狙って押し寄せてくるって噂はチラホラと聞いたことがあるけど……。


前も上級生の不良たちが授業中に喧嘩を売りにきたとかで問題になっていたし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る