第34話

視線の先を辿たどって見てみれば、教室の隅っこで背中を丸めて机に突っ伏している金髪頭。



猛犬注意の看板でも傍らに立っていそうな凶悪オーラだ。


肩を叩いたら噛みつかれそうな。


背中を見ただけでもピリピリしているのが分かる。



そっか。昨日の澤田君の微妙な反応の理由はこれか。


確かにこれじゃ肩身が狭いし、キツイよね。


1人、納得した気分になって『うんうん』と頷く。




「知らなかった。まさか澤田君がクラスメートからイジメられていたなんて……」


「違うつーのっ。勘違いすんな!」




恐ろしいくらいの地獄耳。


ポツリと呟いた私の声を拾ったらしい澤田君は、凄まじい勢いで立ち上がり、整った顔をこちらに向けてきた。


途端にラメをばら撒いたような、キラキラのエフェクトが私の脳内に掛かる。



うん。今日も顔が良い。


状況を忘れてついつい見惚れてしまうくらいに。


廊下を歩いていたギャルの先輩達も「えー、あの子カッコ良くない?」と、話しながら後ろを通り過ぎていった。


しかし、澤田君は不機嫌。


本当のことを言われて恥ずかしかったのか、私を成敗する勢いでイスを倒し、廊下に飛び出てくる。

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