第25話
「おやおや。ココに来た本来の目的を忘れていないかね、澤田君」
「忘れてねぇ。お前のテストの珍回答を見る、だろ」
「それもだけど!マジックの種明かしを知るのも重要なことだから!」
できれば勉強なんかしたくない。それが私、松戸菜々の本音だ。
だからこそ食い気味に澤田君に言った。
そう。これは澤田君が知りたがっていた飛び出す鳩のマジック。
面倒くさがりで反逆心の強い澤田君が、ついつい出会ったばかりの女の願いを聞き入れてしまうくらい、タネや仕掛けを知りたがっていたマジックだ。
ポケットからそっとスマホを取り出した彼の様子を見るからに、興味を惹きつけたのは言うまでもない。
何ならこのままマジックに夢中になって、勉強のことは全て忘れてくれればいいのにと思う。
「そこも覚えてるって、ちゃんと」
「そうですか」
「しかし、すげー。本当に出せるのな」
「ふふん。鳩のピーコです。可愛いでしょう」
「あぁ」
「可愛いでしょう!」
「可愛いよ!」
語尾を荒げて『可愛いと言え』と圧力をかける私に澤田君は素直に従った。
絶世の塩顔美男子から容姿を褒められたピーコは、嬉しそうに首を伸ばして澄んだ瞳を輝かせる。
澤田君の方だって、ピロリンなんて音を立てて写真を撮っているんだから既にピーコの虜。
よし。このネタは使える。
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