第26話

「いいですか、澤田君。このマジックで重要なのはまず鳩と仲良くなることです」


「ふーん。鳩とな……」


「仲良くなるには、毎日愛情を込めて話しかけながら餌をあげることが大事なんですよ」


「へぇー。話しながら餌をかぁ」


「そう。後は言わなくてもわかりますね?」



くいっと眼鏡をずり上げて大真面目な顔で澤田君にもっともらしいことを言う。



そんな私にピーコが同調するようにクルックーと鳴く。


さすがピーコ。空気を読むのがうまい。



「だから毎日ココへ来いってか」


「そうです。そのついでに私へ勉強も教えて貰えれば」


「だったら(仮)メンバーってことにする?」


「お試しで生徒会に入るってことか?」


「うん。それなら生徒会室にも入れるし、ありだよね?」



説得にかかる私の横から理央が書類を差し出し澤田君にふんわりと笑いかける。


「はい」と澤田君にペンを渡して「ここに名前を書いてね」と軽い感じに言ってるけど、それを書いたら最後。


生徒会のメンバーとして正式に採用され、任期を終えるまで辞められない。


(仮)なんて口だけ。


言ってみれば気持ちが追いつくまで待っていてあげるの(仮)だ。


どうにかこうにか丸め込んで強制労働をさせる気、満々なはず。



ほんと優しい顔をして中身は鬼畜だ。



それにしても散々反対していたわりには、皆メンバーとして入って貰おうと必死になっているんだから、あの校長もなかなか見る目がある。



引き受けたからには全力で。それが私たち松之木学園、生徒会執行部メンバーの長所なのかも知れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る