『澤田きゅん』
第12話
「はぁー。本当に大丈夫かな。私みたいなヘタレが説得係で……」
今は使われていない古びた第二校舎の前。
ガタつく扉を開きながら不安な気持ちを拭うように独り言を呟く。
物の見事にハズレくじを引いた次の日の朝。
説得係に任命された私は
情報通の用務員のオジサマから聞いた話によると、澤田君は親と仲が悪くて家にいるのがあまり好きじゃないらしい。
だから学校じたいには意外と朝早くから来ている。
今日も既に登校済みだと門の前に立っていた警備員のオジサマが教えてくれた。
澤田君がいるなら、きっと誰も来ない“ココ”だろうって。
確かにココなら誰にも見つからない。
隠れ家としては悪くないと思う。
しかし、長年手入れされていない第二校舎は所々、床板が痛んでいて埃っぽい。
薄暗いし、静かすぎるし、寒いし、廊下から見えるトイレなんて、まるでホラー映画のセットそのもの。
今にも人間以外の何かが飛び出してきそう。
嫌だわー。できることなら今すぐ任務をほっぽり出して外に出たい。
しかし、ここへ来る前に向けられた皆の期待に満ち溢れた顔を思い出すと帰りづらい。
特に校長にとって今の私は、思い詰めていたところにひょっこり現れた唯一の希望の光なのだと思うし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます