第11話
それは他のメンバーも同じ。
引きもする前から、同情するような顔で私を見てきた。
その顔をしていないのは逃れたい気持ちでいっぱいの颯と、何も知らずに提案してしまった小春だけ。
他は皆、自分は当たらないと信じて疑わない。
私も同じく。
半ば覚悟を決めて、くじの棒を掴む。
「せーのっ!」
颯の掛け声で皆が一斉に棒を引く。
周りを見渡せば目に映るのは白、白、白。
白いテープの棒だけ。
あぁ、やっぱり……と、嫌な汗をかきながら恐る恐る自分の手もとを見れば、残酷なまでに輝く赤いテープの棒が。
「あぁ……。おかえり、赤テープ。また会ったね。もしかして君は、私専属の棒なのかい?」
「うわー。お疲れ様、菜々……」
「やっぱり菜々か」
「何と言うかまぁ……。本当にくじ運がないね」
堪らず棒に話し掛けた私の肩を叩きながら、生徒会のメンバーは気まずそうに苦笑いを浮かべる。
そう。何を隠そう、私……松戸菜々の最大の悩みは、このあり得ないくらいのクジ運のなさ。
前回もこれで人気のなかった【庶務】の役を引いたのだ。
「ごめん、菜々ちゃん!」
事情に気づいた小春の申し訳なさそうに謝る声が、微妙な雰囲気の漂う生徒会室に響いた。
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