第5話

「酷い!自分の首を守る為に生徒を生贄にするなんて……!」


「そうじゃない!違うのよ、本当にっ」


「どこが?絶対、違わないわよね?ピーコ」



二つに結んだおさげ髪をぶんぶん振り回し、焦りまくりの校長をチクチクと攻め、生徒会室で飼っている鳩のピーコにざっとらしく話しかける。


頭の賢いピーコはつぶらな瞳で私を見つめると、じろりと校長を睨んだ。



まぁ、校長の気持ちもわからなくはないよ。



綺麗事だけじゃ運営はできないし、何より不良だからといって簡単には切り捨てたくないって気持ちもあるんだと思う。


私だって協力したい気持ちはあるし。




だけど、寄りにも寄って出された条件が【澤田慧悟の更生】だなんてついていない。



だって澤田慧悟と言えば見るからにガラが悪く、学校一の問題児。


狂暴、凶悪、傍若無人、短気で我慢弱く目が合えば因縁、口よりも先に手が出てくるような喧嘩上等のバチクソヤンキー。


すぐに頭に血が上るし、暴力的でどうしょうもない男だ。



そりゃ顔はいい。メチャクチャいい。2度見だけじゃ足らず3度見するくらいにいい。


唯一そこだけは評価したくなるくらい顔がいい。



理央が醤油顔、颯が砂糖顔なら澤田君は満場一致で塩顔。


一重、鼻が高い、唇が薄い、の三点セット。諸に私のタイプ。



しかし中身については微妙なところだ。


詳しく知らないし。


同じ学年とはいえ、私は5組で澤田君は3組。あまり接点もない。


おまけに彼は学校もサボリがちで滅多に授業も出て来ないから、入学して2ヶ月くらい経った今でも話したことがないクラスメートが大勢いるくらい。


噂によるとメチャクチャ俺様らしいけど、実際のところは謎。

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