第64話

「追われてる?」



彼はチラリと私を上から下まで見ると、興味がなさそうに『ふーん』と一言呟いた。



しかし、興味がなさそうな態度とは反対にダルそうに首を鳴らしながら裏口に親指を指す。



「来い」



短く一言放たれたその言葉は、窮地の私には天の声、いや神の声にすら聞こえた。



一瞬、乱闘の現場を目撃したから口封じされるのかと思ったけど、仲間と思わしき人物に『悪い。少しだけ抜ける』と告げた彼の様子に違うと思い直す。

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